人名地名の新鉱物・都茂鉱

今日も人名地名に因んだ新鉱物を紹介しよう。1962年に東大名誉教授の島崎先生らによって島根県都茂鉱山で発見記載された都茂鉱だが、今日の画像は原産地のもので無く昨年話題となった長野県向谷鉱山産の標本画像だ。本鉱はBiTeと単純な化学組成の鉱物であるが、先生の若きし頃の50年代後半は、ビスマス鉱物に見られる複雑さと分析機器能力の限界で、3年間のお蔵入りが有りその後定量分析機器の普及に伴い、ご苦労の末記載に至った事が、先生著書の「石の上にも五十年―一鉱床学者の閑談36話」に詳しく書かれている。そんな金属鉱物マニア憧れの都茂鉱が、昨年長野県向谷鉱山で大量に発見され、私も発見当初からその採集の機会に恵まれた1人だった。当然、原産の都茂鉱山丸山坑産の本鉱も所有しているが、此方は後日紹介するとして、この向谷鉱山産の標本グレードと言ったら、半端でないのだ。凄いものは、本鉱の結晶のみから成る2cm前後の脈を成した掌の倍サイズのものを石友は採集している。私も片割れの8×5cmサイズのものをお裾分けしてもらったが、余りの凄さに思わず唸った程だ!ハンドルネームbismuthとしてはたまらない鉱物なのである。因みに今日の画像標本は、2番目にお気に入りの標本スタイルを成したものだ。